体表腫瘤切除(悪性黒色腫)(唾液腺癌)(日帰り手術)
今回ご紹介させていただくのは、16歳のラブラドールレトリバーの男の子です。
2年ほど前、背中に小さなしこりがある事に気がついたそうですが、高齢でリスクもあるので手術をしないで様子を見ましょうといわれていたようです。
しかし1年ほど前から急激に大きくなり、後肢も衰え6か月前より寝たきりになってしまったという事でした。
これまで、寝たきり生活だったそうですが、床ずれひとつもできていなくてお家で上手に面倒みていただけていたようです。
こちらがご来院時の写真です。
背中に頭よりも大きな、とても巨大な腫瘤ができてしまっています。また首にもこぶし大の大きな腫瘤ができてしまっていました。
腫瘍の大きさに飼い主様も手術はあきらめていたそうですが、なんとかできる事はないかと当院を来院されたそうです。
腫瘍を含めた体重は31㎏ほどありましたが、あばら骨が目視できるほどやせてしまっていましたので腫瘍が全体の3割ほどを占めていると推測されました。
食欲はあると言う事でしたが、血液検査ではひどい貧血状態でした。腫瘍の重みで身動きがとれないようでした。
高齢でありオーナー様も心配されていましたが、腫瘍もどんどん大きくなっており、いつ皮膚が裂けてしまってもかしくない程でしたのでよくご相談されていただき今回手術に踏み切る事となりました。貧血であることや、かなりやせていたので、体力的にも麻酔のリスクはある手術となりましたが、レーザーを用いてなるべく負担の少ないようこころがけました。
ことらが、摘出した腫瘍です。30cmもある大きな腫瘍で重さも7kgを超える巨大な腫瘍でした。この腫瘍には、体から無数の大きな血管が走行しており、少しずつレーザーを用いて切り離していきました。
こちらは頸部にできていた腫瘤です。こちらも首にある太い血管を巻き込むようにしていましたが、無事に大きな出血もなくとり終えました。
お迎えに見られた時も飼い主様はとても心配されておりましたが、無事手術を乗り越えられたことにとても安心されて日帰りで帰られました。
通院は必要となりますが、手術翌日からお家でご飯もしっかりたべれたそうで、これからは、腫瘍による不快感なく生活していただけると思います。
食欲旺盛で、体重も少しずつ戻ってきています。
お父さんやお母さんにとてもかわいがられているラブちゃんです。
病理検査の結果は、体にできていた大きな腫瘍は悪性黒色腫という局所浸潤性や遠隔転移性がともに高い腫瘍でしたので、経過観察が必要となります。また頸部の腫瘍も唾液腺癌でしたので、こちらも注意を必要とします。