悪性腫瘍による前肢断脚(日帰り手術)
今回ご紹介させていただくのは、11歳のアメリカンカールの女の子です。
左前足をびっこひくようになり、様子を見ていたところ肘のあたりが腫れてきた、食欲や元気もなく苦しそうという事でご来院されました。
診察させていただくと、上腕部が全体的に腫れて硬くなり痛みが強いようで足を着いて歩行できなく、かなり呼吸もえらそうな状態でした。
高悪性度の腫瘍が疑われ、この場合、姑息的な手術では再発を免れないため、断脚手術が唯一の選択となります。
しかし、この患者さんは重度の心臓疾患と貧血があり麻酔を含めた周術期リスクが非常に高い状況でした。
今回の手術は、肩甲骨を含めた前足帯筋とよばれる複数の筋肉を離断し、神経、血管を切断していきます。
毛刈りをしてみると、腫瘍が大きくはびこっている事がわかります。
CO2レーザーでスピーディーに実施し出血も最小限ですみました。
術後は驚異的な回復をみせてくれ、3本足で元気に走り回る事ができひとまず安心です。術後は貧血の状態も少しずつ改善され、白血球も正常にもどりました。
病理検査結果は腫瘍の完全摘出と膝窩リンパ節への転移は認められませんでした。しかし、腫瘍の性質上、再発率が非常に高いため今後放射線療法の加療が選択肢となります。