口腔内腫瘤(悪性黒色腫)(日帰り手術)
今回ご紹介させていただくのは、16歳のヨークシャーテリアの男の子です。
口の中にできものがある事に気づき、見る見るうちに大きくなってきたとの事でご来院されました。
また、もともと重度の心臓病で薬を常用しているとの事でした。
診察させていただくと、下顎の左側に大きな腫瘍ができてしまっており、口から血まじりのよだれを出し、舌が腫瘍でおされ、横にそれてしまっていました。また腫瘍が喉を塞いでしまいそうなほどで、組織がとても脆くすぐに出血してしまう状態でした。
検査させていただくと、悪性の黒色腫の可能性がとても高くすぐにでも手術した方がよい状態でしたが、僧房弁閉鎖不全症という心臓の病気を患っており、咳も出ていてまた腎臓の数値も高く16歳と高齢のためオーナー様もとても心配されていました。
診察の時に口を大きく開けて飼い主様に腫瘍の大きさを確認していただくと、まさかこんなに大きくなっていたなんてと、とてもショックをうけられていました。
しかし増殖のスピードがきわめて速く、このままでは腫瘍によりご飯が食べれなくなったり気道を圧迫してしまう事が考えられオーナー様も何もせず見ているだけはできないと言う事で、よくご相談させていただき手術を行う事になりました。
麻酔をかけしっかりと見ると、腫瘍が奥歯のさらに奥まで増殖してしまっていました。
悪性黒色腫は再発のリスクがとても高く腫瘍をしっかりと取り除かないといけないため、腫瘍がはびこっている下顎の骨ごと腫瘍を切除をしました。
こちらが手術後の写真です。
出血もなく、縫合部もとてもきれいです。
レーザーを用い出血を最小限に抑え、無事に手術を終える事ができました。
術後の覚醒も心配されましたが日帰りで帰宅する事ができました。
翌日からご飯もしっかりと食べる事ができましたが、術後咳が続きましたので心配しましたが、咳も徐々に落ち着き、飼い主様も術後の回復の速さに驚いておられました。
病理検査の結果はやはり高悪性度悪性黒色腫で、下顎骨にまで浸潤していました。
悪性黒色腫は局所浸潤性、遠隔転移性がともに高い腫瘍ですので、今後は腫瘍の再発に注意が必要となります。
下の写真は術後の写真ですが、顔のおおきな変形もなく舌も上手に動かせています。